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TOP >> ;Archive: 22. 8月 2017

『民泊新法の成立と民泊』 インスクエア ビジネスニュース Vol.1361

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■━━━━━━[vol.1361]2017/08/22━■

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01 ┃本日のコラム -
  ┃『 民泊新法の成立と民泊 』
━━┃…………………………………………
  ┃     / 重村達郎(弁護士)
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タイトル:民泊新法の成立と民泊、
グループホームの利用・建築規制

自宅や資産として保有しているマンション
の一室を利用して旅行者を宿泊させる
いわゆる「民泊」のルールを定めた住宅
宿泊事業法(民泊新法)が、去る6月
の参議院本会議で可決―成立しました。

 施行は来年春頃が想定されていますが、
家屋の所有者は都道府県に届け出する
ことで、年間180日を上限として、
合法的に民泊事業を営むことが可能に
なりました。(各自治体の条例で上限日数
の引き下げ可能)。

 既に、観光客が多く、ホテルや旅館
の供給が不足している京都では、
不動産業者などが使われなくなった
空き家を買取ってリフォームし、
民泊用施設として貸出す動きも強まって
いて、スマホでの地図情報を頼りに、
若者や外国人らが、現地に管理者も
不在の路地裏を歩き廻るような事態が
出現しています。

 これまでは、農家民泊や国家戦略
特区における民泊の仕組みを活用するか、
旅館業法の簡易宿泊所免許を取る
しかなく、民泊施設の大半が無許可で、
野放図に運営されている状況でした。

 新法の施行により、民泊のホスト
には届け出が求められるだけではなく、
それに代わって物件を管理する住宅
宿泊管理業者や住宅宿泊仲介業者にも

国土交通省等への登録が義務付けられ、
無許可民泊が横行していた状況が大きく
改善され、観光立国に向け新たな
ビジネスとして活性化することが期待
されます。

 他方、友人や家族の知人をタダで
自宅に宿泊させるなどは、無論、業と
して行うわけではないですから規制の
対象にはなりませんが、このような法律
ができると、隣は何をする人ぞで、
風体のよくわからない者が頻繁に
出入りしていると、付近の住民から
チクられるということにもなりかねません。

 偽名や自宅外の住所を記入して宿泊
しただけでも捜査当局が別件逮捕する
ことは可能ですし、東京オリンピックを控え、
テロリストが眼の行き届きにくい
民泊施設を利用することも想定されま
すから、民泊のホストは事業者として
税務署と警察の二重の監視にさらされ,
責任を負うこともありえます。

 民泊は、富裕でない不特定多数の者
が出入りする可能性が大きく、静謐な
住環境が害されるということで、往々に
して嫌われ者であり、分譲マンション
などでも、管理規約の改正によりその
利用を規制する動きが強まっています。

 同様に、都市計画法に基づく地区計画や
建築基準法上の建築協定の策定に
あたり、良好な住環境を維持するために、
敷地面積の最低限度の定めや高さ規制
とともに、戸建て住宅以外の建築を
規制することがしばしば提案されます。

 この場合、障害者が自立して地域
社会で共同生活を営むグループホーム
などは、「住宅」ではない
(「寄宿舎」である)
として排除される傾向にあり、
共生社会の実現と地域での支えあいの
促進という観点から問題視されています。

 建築基準法上は、病院、旅館や
寄宿舎などは不特定多数の者が利用
することから、耐火建築物や避難路
の確保等の規制が必要な「特殊建築物」
とされ、一定の要件の下、個人住宅
より厳しい規制がなされています。

 他方、住宅品質確保法などでは、
人の居住の用に供する家屋という
「住宅」の定義から、寄宿舎や
グループホームなども当然住宅に
含まれていますし、都市計画法に
おける各用途地域の建築物制限に
おいても、第一種低層住居専用
地域でさえ、「住宅」のほか、
老人ホームや寄宿舎の建築は排除
されていません。

 そうすると、上記地区計画や
建築協定の策定などにあたり、
グループホームは「住宅」ではなく
「寄宿舎」に該当するからという
ことで建築自体を禁止することは、
民泊用住居と同様、法的解釈とし
ては困難で、後は住民自治―多数者
意思としてどこまで許容されるのか、
ということになりそうです。

 個人的には、静謐な住環境の
保全という観点からは、不特定多数
の者が利用する民泊の方が、特定の
障害者が日常的に居住するグループ
ホームなどよりも規制がかかっても
やむを得ないように思いますが、
ここは住民の住宅資産の保全や
センシテイブな価値観ともかかわる
ところで、難しい問題でもあります。

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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
  t-shigemura@himawarilaw.com 
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京都大学法学部・経済学部卒
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