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『家の中に工場を作る?~化粧品製造の挑戦』 インスクエア ビジネスニュース Vol.832

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■━━━━━━━━━━━━━━━━━[vol.832] 2015/07/30━■

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01 ┃ 本日のコラム -家の中に工場を作る?~化粧品製造の挑戦
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  ┃/天川 大輔(行政書士 イノベーション経営法務行政書士
  ┃       事務所)
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イノベーション経営法務行政書士事務所の天川です。

薬事の仕事をしていると、毎日色々な問い合わせや相談があります。
中でも多い相談はこの2つ。

「こんなの作って(売って)るんだけどこれって化粧品に当たる?」
「こんな広告を出してるんだけど薬事的にOKな表現なの?」

回答としては、前者についてはほとんどが「法律上化粧品に該当す
るので場合によっては許可の取得が必要だし、法規制の対象です」、
後者についてもほとんどが「薬事的にNG表現なので使用不可、もし
くはかなり黒に近いグレーな表現なのでお勧めしません」と。
どちらにしても相談者の方の気分を沈めてしまう回答内容になって
しまうことがほとんどです(もちろん代替策もお伝えしますが)。

前者の質問でさらに多かったのが「手作り石鹸」について。
主婦の方や小規模のオーガニック志向の事業所さんが、とても作っ
て売りたがっている代表的なアイテムです。

ただ、単なる香りを楽しむものでもない限り、いくら「手作り」で
あったとしても少しでも清浄機能や美容機能を有するのであれば、
それは法律上立派な「化粧品」です。
個人的、身内で楽しむ程度ならば問題ないですが、それをどんな小
さな商圏であったとしても販売等してしまうと規制の対象です。

石けんは市販の器具、原料で案外簡単に作ることができてしまうの
で意外に思われる方も多いですが、規制内容自体としては、大手化
粧品工場やメーカーが大規模に本格的な工場で作って販売する場合
と、主婦の方が自宅の台所で少量作る場合とで大差はありません。

と、まあここまで相談者の方にお話すると、大抵の方はそこまで大
変とは考えていなかったと石けんの製造・販売を中止したり、必要
な設備と許可を持っている他の会社等に製造委託するのですが、今
回ご相談された方はそれでもどうしても自社で作って販売したいの
で、何とかならないか、という案件でした。
そこから許可取得に向けて長い戦いが始まります。

化粧品を作るためには「化粧品製造業許可(一般区分)」という許
可を都道府県から取得する必要があります。
化粧品は口の中にまでは入れませんが、皮膚に直接塗ったりします
し、健康被害の発生も考えられますので、高度な品質管理が当然な
がら要求されます。
大きな会社では専用の大きな自社工場を持ち、クリーンルームに近
い設備を設けていることが多いです。

今回ご相談を受けている会社。
事務所は普通の雑居ビルの一室ですが、さすがにオフィスビルの部
屋の中で許可を取得するのは厳しい。
工場何てもちろん持っていない。
そこで、どんなに古い物件でも構わないので17平米くらいの手頃な
家賃の賃貸物件(もちろん事業用使用可が前提)を見つけてそこを
製造所にしたい、というのがリクエスト。
つまり普通のアパートである家の中で化粧品工場を作ってしまおう、
ということです。

第一の壁は大家さんによる承諾。
当然ながら大家さんにとっては、他の賃借人から苦情が来ると困る
ので、普通の住居目的の賃借人に借りてほしいのが本音。
その部屋で化粧品を作りたいと伝えると、匂いは大丈夫なのか、火
の使用による危険はないのか、有毒物質を排水溝に流したりはしな
いのか等かなり警戒され、断られ続けること数件。
そもそものスタート地点である物件確保にまず時間がかかることに。

物件が確保できてもここからがある意味本番。
都道府県の審査担当者(今回は東京都でしたが)に、化粧品を製造
するのに適した設備・試験検査器具・物理的環境を整えており、品
質管理・製造管理に問題がないのか、証明・説得しないといけませ
ん。
前提が普通の住居なので、構造的には普通のワンルームにミニキッ
チン、トイレ、ユニットバスがあるだけ。
広さも15平米の正方形型。

以下、対策の一例です。
・かなりしっかりとした床から天井までのパーテーションを内装工
 事で入れて、部屋を二つに分ける(クリーンスペースとその他ス
 ペースに分けるため)
・シンクをもう一つ設置して流しを二つに(器具洗浄専用とその他
 用とするため)
・窓には光を完全に遮断できるブラインドを設置。目の細かい網戸
 も設置(異物混入、太陽光による品質変化を防ぐため)
・換気扇やクーラーの排気口にもネットを設置(異物混入防止)
・製造スペースの床は全てPボードに(衛生管理、異物混入防止)
・手指自動消毒器の設置
・作業用白衣、白衣専用ロッカー、入室前確認用の鏡の準備
・作業工程に応じた作業台、保管棚を作業フロー順に配置
・外部の試験検査機関と施設利用契約の締結

まだ原材料も入ってきておらず準備段階ですが、既に部屋がいっぱ
いいっぱいに(笑)
正直これだけでは設備的にまだ厳しい所もあったのですが、詳細な
運用計画、製造計画を作成して審査担当者に丁寧に説明することで、
何とか設備面と運用面を総合考慮してもらうことでOKの返事を頂け
ました。

もちろん審査担当者や申請先都道府県によって若干ルールが違いま
すのでいつもうまくいくというわけではありませんが、時間をかけ
て丁寧な説明を続けることで、審査担当者と信頼関係を築けたこと
から良い結果が出た事案でした。

根拠となる法律が古いと昔のビジネスモデルを前提にしているので、
最近のように小さな会社がユーザーの多様なニーズに沿った少量多
品種の製品を製造し、かつそれをネットを通じて直接エンドユーザ
ーに販売するというモデルとの間に乖離が生じてしまいます。
当然ながら最低限の規制は必要ですが、高い法意識を持っている事
業所のビジネスチャンスの芽まで摘まないような運用を期待したい
ですし、現場の実態を適切に伝えることの大事さを感じた一件でし
た。

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▼プロフィール:
・氏名:天川 大輔(あまかわ だいすけ) 38歳
・出身:広島県広島市
・出身高校/大学:修道高校/同志社大学法学部/広島大学大
      学院法務研究科
・所属:イノベーション経営法務行政書士事務所
    【事務所総合HP】http://www.keieihoumu.com/
    【創業支援FB】https://www.facebook.com/sougyoukigyou
・経歴:アパレル販売、経営コンサルタント会社勤務を経て
    税理士法人、行政書士法人で実績を積み、独立に至る。
    専門分野は「医療法・薬事法」、「建設業法」。
・趣味:バイク、楽器(サックス)演奏、ジャズ鑑賞、街歩き

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