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『高度人材外国人と移民・難民政策』 インスクエア ビジネスニュース Vol.924

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■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━[vol.924]2015/12/22━━■

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01 ┃本日のコラム -『高度人材外国人と移民・難民政策』
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  ┃ / 重村達郎(弁護士)
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 高度人材外国人という言葉をご存じですか?ご承知のように、我が国で
は、単純労働に従事する一般外国人労働者は法的に排除されていますが、
「高度人材外国人」については受入れを促進する政策がとられています。

 ここで、高度人材外国人とは、「国内の資本・労働とは補完関係にあり、
代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーシ
ョンをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な
労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待され
る人材」(平成21年5月同受入推進会議報告書)とされています。
 
 そして、この高度人材外国人の受入れを促進するために、ポイント制を
活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度が同24年5月から導入さ
れています。いかにもカード社会、マニュアル世代の官僚が考えそうな仕
組みです。 
 
 具体的には、これらの活動内容を、「高度学術研究活動」「高度専門・技
術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類し、それぞれの特性に応じて
学歴、職歴、年収などの項目毎にポイントを設け、ポイントの合計が一定
の点数に達した場合に、
 
複合的な在留活動の許容、在留期間5年付与、永住許可要件の緩和、配偶
者の就労、一定の条件下での親の帯同、入国・在留手続の優先処理などの
優遇措置が与えられ(「高度専門職1号」)、

それで3年以上活動していると、上記の優遇措置の他に、在留期間が無期
限で、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことが出来るようになります(「同
2号」)。

 ポイント制における評価項目と配点は法務省令で規定されていますが、
法的には、就労の在留資格に関する要件(資格該当性、上陸許可基準適合
性)を満たす者の中から高度人材外国人を認定する仕組みで、今般、ポイ
ント特別加算にかかる関係告示の改正に向けてパブリックコメントの募集
がされています。
 
 そもそも、来日する外国人を、日本にとって役立つか否かという上から
目線で「高度人材」と特定在留資格者、及び「単純労働者」に分類し、前
者にはアメを与える一方、後二者には在留資格・期間制限つきの活動許容
または不法就労予備軍として入国を制限するという発想自体が既に差別的
な外国人政策です。
 
 そこには、治安維持の観点という以上に、単純労働者を受け入れても税
収はさほど期待できない一方、日本人の雇用と競合し、子供でも生まれれ
ば教育や福祉費用などがかさむので歓迎しないという底意が感じられます。
 
 他方、政府は、これまで技能実習生の名目や一定範囲の日系人を事実上、
単純労働者として受け入れる入管政策をとってきましたが、派遣会社やブ
ローカーの手で各地の自動車工場や家電工場などに送り込まれて相対的に
低賃金で働かされ、言葉と文化の壁もあって日本社会に溶け込めない人た
ちが多数います。
 
 また、就労可能なビザを取得できない外国人は、短期滞在で来日しては
オーバーステイになり、結果3K職場に追いやられている者も少なくあり
ません。
 
 しかし、発展途上国との大きな経済・所得格差が厳然とある中で、かつ
ての日本人がそうであったように、先進国で学び、働くことを願い、また、
海外移民として新天地を求めて日本にやってくる外国人が絶えることはあ
りません。
 
 日本社会は、今後、「高度人材」だけではなく、外国の普通の人たちにと
っても開かれたあこがれの国として彼らと共生できる国になっていくのか、
また外国からの移民労働者や難民をどう受け入れていくのか。
 
 この問題は、同時に、全雇用労働者の4割近くが非正規労働者となり、
労働者派遣法の改正によりますます派遣労働者が景気の調整弁として利用
される契機が強まり、親の年収や教育格差を通して階層格差が拡大しつつ
ある日本社会の構造を映し出す鏡でもあります。
 
 高齢化に伴う労働力人口の減少の中で、長期的にはかえって「国益」を
損なう恐れも大きい分断・排除の入管政策を更に進めるのならば、厚生労
働省と統合して雇用管理省とでも名前を変えた方がいいかもしれません。
 
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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
  t-shigemura@himawarilaw.com 
 事務所HP・個人HP 各名前で検索してください
京都大学法学部・経済学部卒
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