『「ガラスの天井」と保育所待機児童の解消、配偶者控除の見直し』 インスクエア ビジネスニュース Vol.1103
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■━━━━━━[vol.1103] 2016/09/13━■
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01 ┃本日のコラム -
┃『「ガラスの天井」と保育所待機児童の解消、配偶者控除の見直し』
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┃ / 重村達郎(弁護士)
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ヒラリーかトランプか、米大統領選は様々な角度から分析できる興味
深い争いになっています。白人中心主義対他民族との共生重視、軍産複
合体対既得権益打破、保護主義対自由貿易主義、小さな政府対大きな政
府等。
双方とも多分に支持者を意識したパフォーマンスが目立つ上に、米国
覇権の衰退の中で選択肢は相対的に限られており、また、米国社会は複
雑な利害、要素が絡み合っているので、どちらが大統領になっても極端
な違いは生じないのでしょうが。
そんな中で、ヒラリーが米国初の女性大統領をめざすということで、
「ガラスの天井」という言葉を引き合いに出しているのが眼につきまし
た。スケールが違うとは言え、民進党の代表選挙でも蓮舫議員も同じ言
葉を述べています。フェミニズムの派生形態とも言うべき社会現象です。
権力志向が強く、同性の他人や子供にも厳しい女性が必ずしも同性から
好かれるとは限らず、男女同権を前面に押し出したからと言って女性票
をごっそり獲得できるかは疑問です。
しかし、世界では現在、少なからぬ大統領・首相や国家元首が誕生し
ている中にあって、日本の女性議員や経営者・幹部比率が欧米先進諸国
に比べ格段に低い水準にあることも事実で、戦後の婦人参政権付与から
70年たっても男性中心社会の現実はなかなか変わっていません。法曹
界でも、女性比率はやっと20~30%といったところでしょうか。
そんな中で、多くの働く女性達にとって、保育所の整備が遅れているた
めに、安心して子供を産み、預けて働けないというのは、ガラスの天井
以上に切実な問題です。
小池新都知事は、重要な選挙公約として保育所待機児童の解消を掲げ、
最初の仕事として、土壌汚染のおそれのある新築地市場の開場延期と共
に、現在原則2歳までの小規模保育所の拡充に向けて年齢制限の撤廃や
設置基準の緩和などを政府とともに進めるなど、さすがに機を見るに敏
といった観があります。
女性労働にとってもう一つの壁が「103万円の壁」と言われるもの
です。
年収103万円を超えると夫の扶養家族から外され所得税を課されるた
めに、毎月8万程度の家計補助的労働におさえ、そのことが結果的に女
子の社会進出を妨げているということで、反面、38万円の配偶者控除
を撤廃しようとする動きが出ています。
また、従前「130万円の壁」としてあった社会保険の加入基準を、当
面大企業については109万円にして、健康保険、厚生年金の加入促進
と女性の自立を促す法改正が行われています。これは国保、国民年金財
政の赤字解消が隠れた狙いでもあるのですが。
「一億総活躍社会」というネーミングは好きではありませんが、女性
の社会進出と地位向上、自立を、税制や社会保険、及び保育所等社会資本
の整備の側面から支えていく必要性が待ったなしの状況に来ているのは
確かなようです。
その前に、まず男性の意識改革をという「ガラスの天井」派からの反
発がありそうですが。
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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
t-shigemura@himawarilaw.com
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京都大学法学部・経済学部卒
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