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『法人税法の改正―株主総会の6月末集中がなくなる?』 インスクエア ビジネスニュース Vol.1148

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■━━━━━━[vol.1148] 2016/11/22━■

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01 ┃本日のコラム -
  ┃『法人税法の改正―株主総会の6月末集中がなくなる?』
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  ┃ / 重村達郎(弁護士)
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 年中行事のように6月末に集中していた大手会社の株主総会
(弁護士としての私にはほとんど縁がないですが)が、
来年から様変わりするかもしれません。  

 政府は、2017年度からの法人税法改正で、企業の稼ぐ力を
後押しすべく、事業再編や役員の利益連動報酬における
税負担の軽減や、株主総会期日を柔軟に設定できるように、
17年度税制改正大綱に盛り込む方向で与党税制調査会
と調整に入る、との報道がなされています。

 具体的には、現在でも企業が一事業を別会社として切り出し
他企業に売却する場合は法人税がかからない措置が既に適用
されているところ、企業の一部門を資本関係のない新会社として
切り出し、既存株主に新会社の株式を交付する「スピンオフ」
に伴う税が軽減されます。

 一般的に事業売却と見なされると、新会社が持つ資産の時価と
帳簿価格の差額は売却益として法人税がかかるところ、今回、
切り出し元の会社と新会社との間に資本関係がなくても、
新会社の経営者や従業員、資産などから「一定の支配関係」
が認められれば、法人にも株主にも課税の繰り延べを認める
方向で検討するようです。

 また、営業利益や自己資本利益率(ROE)などの
利益指標に連動した役員報酬に対する税軽減の対象企業が
拡大されます。

現在は有価証券報告書を提出している企業を対象に、
税務上の費用(損金)として法人税の負担が軽減されており、
ホールデイングスなどグループの統括会社は対象だが
実業を担う子会社の役員は外れているところ、
17年度改正で子会社の役員にも対象を拡大し、
投資家を意識した経営を後押しする、との意向です。

 最後の株主総会の期日については、現在、上場企業は
法人税法上、決算日から3ヶ月以内に法人税の申告を
しなければならず、3月決算が多いために横並びで
6月末に株主総会が集中しています。

 これを、法人税の申告期限を見直し、株主総会の
期日設定を柔軟に設定できるようにして、総会を決算日
から3ヶ月以上たった後に開く場合には申告期限を
延ばす案が検討されるようです。

 さて、このようにやや細かく来年度税制改正の方向を
紹介したのは、私も含めて、この税制改正が大企業に
対する法人税軽減をさらに拡大することにより、
企業の経営改革を税制面から支え、稼ぐ力を向上させようと
するものであることは理解できますが、文面だけでは
具体的な内容や企業の利益がどれほどのものになるのか、
さっぱり実感できないからです。

 膨大な借金を抱える日本の財政のあり方、ひいては
今後の国民生活にも関わる重要なことが、税法の細かな改正
という一部の族議員以外、十分理解できないような形で
毎年立法化され、実質的な改正内容は私的機関である
与党税調で決まり、運用されていくという従前のやり方が
続いています。

 気がついたときには、やたらと企業の合併、買収や
分社化が進行し、企業グループの全体像が見えにくく
なっている一方で、本来支払われるべき法人税がますます
合法的に免除され,それによる利益が従業員や株主に
相応に還元されないまま、大企業は内部留保を膨らまして
いるのです。

 一方、個人は、これから年末調整や確定申告の季節ですが、
年金生活者でさえ健康・介護保険料までがっちり捕捉-年金収入
から天引きされて、現役時の収入の6,7割程度保証という
年金制度改革時の唱い文句はほとんど空手形になりつつあります。

 株主総会の集中化をなくすことにより、長期的には
横並び意識とシャンシャン株主総会の解消、株主目線での
改革にもつながることが期待されますが、やたらと難しい
税制の仕組みにしたり、目くらましにより抜け駆けが
生じないように、野党もきちんとチェックし、
その是非を論戦する能力が問われています。

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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
  t-shigemura@himawarilaw.com 
 事務所HP・個人HP 各名前で検索してください
京都大学法学部・経済学部卒
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