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『英国のEU離脱国民投票結果から見えてくるもの』 インスクエア ビジネスニュース Vol.1053

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■━━━━━━[vol.1053]2016/06/28━━■

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01 ┃ 本日のコラム -
  ┃ 『英国のEU離脱国民投票結果から見えてくるもの』
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  ┃ / 重村達郎(弁護士)
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 離脱(Leave)か残留(Remain)か、注目された
英国におけるEU国民投票結果は、離脱となって世界に衝撃を与えまし
た。報道界を含め、欧米のエスタブリッシュメントは、最終的には英国
国民は残留を選択するだろうとタカをくくっていた趣きがあり、見事に
思惑が外れた格好です。

 結果が出た後で、あれこれ原因を分析したり評論するのは比較的容易
です。曰く、移民の増加による不満―極右・排外主義政治勢力の伸張、
主権制限とEU官僚への反発、スコットランドやアイルランドの独立に
よる英国の分解加速の恐れ等々。

 しかし、世界を解釈したところで、現状が変わるわけではありません。
私が今回の投票結果を見て感じたことはむしろ、以下のことです。

 まず、これだけ事前の報道や選挙運動がヒートアップしたにもかかわ
らず、先のギリシャ国民投票と同様に、この期に及んでも投票に行かな
かった有権者が30%弱もいたことです。

 即ち、離脱派の勝利といっても、有権者全体から見れば、0.7×0.5=
0.35で35%強の支持しかありません。政治に無関心か、離脱でも残留
でもどちらでもいいと思ったのか、とにかく棄権した残り約30%の声
なき大衆が離脱という結果を可能にしたともいえ、自公連立政権のよう
に、小選挙区制により丸ごと多数議席をかすめ取ったようなものです。

 レーニンが1917年11月に冬宮襲撃―武装蜂起を指導し、クーデ
ター、政権奪取をした当時のボルシェビキは党員わずか4千人程度、直
後の全ロシアソビエト大会でもやっと51%程度の多数をとったにすぎ
ません。

 少数者でも決定的な行動(今回では国民投票)の時点で相対的な多数
を確保し、他の多くの者が積極的な行動に出ないことにより消極的な支
持を与える形になれば、事は成就するということです。

 次に、若者層では約70%が残留に賛成、高学歴層ほど残留派が多数
という出口調査結果が出ていることです。自由な国境の往来や豊富な物
資の流入を可能にするEU体制が自由を求める積極的な若者に人気があ
るのは、ある意味で当然です。
 
 今回の投票結果は、かつての大英帝国への郷愁でもないでしょうが、
高齢者層における離脱支持多数との対比からして、先行世代の英国の将
来、未来に対する責任という観点からは、英国社会における地割れを明
らかにしたとも言えそうです。

 今後、離脱による各種制限が進むにつれ、優秀で意欲のある英国の若
者が国外に出る傾向はますます強まり、社会の中核を担う層での劣化、
空洞化が進行するかもしれません。若者に希望のない国に明るい未来は
ないのです。

 もっとも、それはそれで、かつてのハプスブルグ家の栄光から現在の
オーストリアのように、こじんまりした美しい成熟した国になる可能性
もあります。

 目先の株価への影響とか、対岸の火事によるアベノミクスの評価とか
はさておき、ある時点における決断や人間行動の結果が長期的な視点で
見た場合に、後からみれば歴史やその後の人生における大きな転換点だ
ったということは、少なからずあることです。

仕事であれ、家庭であれ、人々は社会的な動物として、このような社会
に生きているのです。行動しなかった人も、その故の結果を引き受けな
ければならなりません。参議院選挙、投票しましょうね。

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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
  t-shigemura@himawarilaw.com 
 事務所HP・個人HP 各名前で検索してください
 京都大学法学部・経済学部卒
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