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『台湾2題―鴻海と地震』 インスクエア ビジネスニュース Vol.960

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■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━[vol.960] 2016/02/09━━■

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01 ┃本日のコラム -『 台湾2題―鴻海と地震 』
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  ┃ / 重村達郎(弁護士)
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 台湾をめぐる最近の2つのニュースが眼を引きました。一つは台湾屈指
の電子メーカー鴻海精密工業によるシャープの買収劇、もう一つは春節の
最中に起きた南部での地震による16階建てマンションの無残な倒壊です。
 
 私は、1999年の台湾北部での大地震の後に、欠陥住宅シンポジウム
のために台湾を訪れ、橋桁の落下や道路の陥没、建物の倒壊など現地の被
害状況を現地の専門家と見てきたこともあり、また、次女が昨年まで台湾
南部の高雄の大学に1年間留学していて、その間2回ほど今回の被害現地
の近くを訪れていたこともあって、他人事とは思えませんでした。
 
 幸い、次女の台湾での知り合いは皆無事だったようですが、倒れたマン
ションの無残な映像は、中学生の頃、新潟地震で団地が棟ごとひっくり返
っていた記憶や、阪神大震災であちこち家がつぶれていた光景を思い出さ
せるものでした。
 
 報道によれば、M6.5、震度は5乃至最大6程度だったようですし、
廻りの住宅や商店はあまり建物ごと倒壊しているようには見えませんから、
震源が内陸部で比較的浅いとはいえ、無残に高層マンションが足元から崩
壊することは通常考え難いところです。
 
 日本では、一般的に言えば、高層マンションの方が平屋や2階建て建物
より構造計算―構造耐力上の審査もやかましく、震度5ないし6程度では
簡単には倒壊しないはずで、その点ではマンションの方が安心感がありま
すが、今回、台湾では逆になっていることの方がまず違和感があります。
 
 古い耐震基準の時に建てられ、先の大地震の後も構造補強されないまま
残されていたか、建築当初から手抜きー欠陥マンションであった可能性が
高いと思います。先の大地震の教訓が生かされず、また、建築規制が甘か
ったために今回たくさんの方が亡くなられたとすれば、これは政策の失敗
であり、また手抜きの人災でもあります。
 
 他方、鴻海によるシャープの買収劇、最終決着はまだですが、経産省―
産業革新機構がお膳立てした日本のメインバンク融資による家電メーカー
再編―液晶部門の切り離しとジャパンデスプレイへの統合による海外への
液晶技術の流出防止という何やら愛国的なもくろみは、台湾の巨大電子メ
ーカーによる札束攻勢の前にあっさり敗北しそうです。
 
 液晶技術は軍事に関連するから政府―経産省が最後は面倒を見てくれる
はずだという淡い期待や、大企業だから簡単にはつぶせないという思い込
みなどは合理的な根拠のあるものではなく、「所詮液晶」という話になろう
としています。
 
 冷静に考えてみれば、大型テレビ・冷蔵庫、クーラーやスマホの普及も
飽和状態になった現在、国内の白モノ家電大手メーカーが5社も6社も生
き残れる客観的な条件はもとより厳しく、他の業界同様、海外巨大企業に
よる買収や国内大手メーカー同士の合従連衡―巨大再編があって当たり前
なのです。
 
 ここで社員各自がどのような道を選ぶか、誰が経営責任を負うかは悲喜
こもごもですが、この間の経過から言えることは、合理的根拠のない思い
込みの話や主観的な期待につながる動きに振り回されると、時間をロスし、
個人的な再生や企業再建の最大のチャンスすら失うこともままあるという
ことです。
 
 物事の渦中にいる時ほど、自分の主観的な願望や虫のいい期待に沿って
事態を善意に解釈しがちで、冷静に見る眼が失われがちです。
 
 弁護士は、日頃から他人や企業が抱える破産、離婚、逮捕、倒産、買収な
ど人生や事業における最大のストレス案件を対象に仕事をすることが多い
ですから、どこかで「所詮は他人事」という一歩引いた眼で冷静に事態を
みて、的確な法的アドバイスをすることが必要で、それがまた、当事者の
抱えるストレスをそのまま背負いこまないための隠れた秘訣です。
 
 でも、案外、自分のことになると客観的かつ冷静に分析して対応出来な
いのは同じかもしれません。

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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
  t-shigemura@himawarilaw.com 
 事務所HP・個人HP 各名前で検索してください
京都大学法学部・経済学部卒
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