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『熊本大地震と予測可能性』 インスクエア ビジネスニュース Vol.1012

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■━━━━━━[vol.1012] 2016/04/26]━━■

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01 ┃本日のコラム -『 熊本大地震と予測可能性 』
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  ┃ / 重村達郎(弁護士)
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 熊本で大地震が起きた。日本列島全体が火山と地下構造プレートの活性
期に入ったようである。至る所で鉄道・道路が寸断され、1万戸以上の家
屋が倒壊・損壊し、山崩れのために跡形もなくなった阿蘇大橋のような箇
所もある。
 
 マスメデイアが連日報道している「わかりやすい」被災風景や混雑した
避難所の状況の背後に、孤立した集落や避難したくても様々な事情で避難
できない人たちが暗数として存在している。田舎は車が使えないと生活が
成り立たない。
 
 ゴールデンウイークを控えて、多くの人がボランテイアに駆けつけてい
る。金のある者は金を、体力と時間のある者は物資の配送や倒壊した家屋
の片付けの手伝いを、専門知識のある者は医療や介護、建物の危険判定士
などとして協働しているのは好ましいことである。
 
 一方、現地で真に必要とされている物資や援助要請の中身は刻々と変化
し、新たな問題が発生しているとともに、柔軟な対応が必要になっている。
たとえば、通常の避難所では生活が困難な単身高齢者や障害者など災害弱
者を受け入れる「福祉避難所」の数や介護スタッフが不足し、二次災害が
懸念されている。
 
 また、避難生活の長期化―車中泊などに伴い、一時期ロングフライト症
候群として死語になりかけていたエコノミー症候群により重症化したり、
「震災関連死」としてカウントされる死者の数が増えている。
 
 がちがちに構造上の強度を固めた建物でも、大地震でボデーブローを食
らっていたら案外次の二次攻撃で脆くも崩れることもあるし(9.11の
NY世界貿易センタービルもそうだった)、避難所に避難したから大丈夫と
いうものでもなく、感染や二次災害の危険がついてまわる事にも目配りが
必要である。
 
 現行建築基準法の新耐震基準は、震度6程度の地震が来ても直ちに建物
自体は倒壊しない程度のものにすぎず、壁などに固定されていなかったた
めに倒れてきた重い家具の下敷きになったり、壊れたガラスの破片で負傷
したりしないことを保障するものではない。まして、以後、安全な住まい
として継続使用できるかどうかは別である。
 
 耐震補強を施したはずの体育館等が損壊して避難所として使えなかった
り、被災者対策の司令塔になるべき市庁舎が使用不能になるなど、避難・
援助計画の前提条件が損なわれているところも生じている。同時多発テロ
に見舞われたような状況である。
 
 加えて、震度7以上の大地震の発生など膨大な予算を使いながら予知は
できていない。熊本で大地震が起きることや近接した時期に2度も震度7
の地震が来ることは想定外だったというのであれば、日本全国どこでも予
測が不可能な状況は同じで、活断層の延長線上の近くにある川内原発の稼
働に固執するのは不可解である。
 
 被災者が自ら語る被災の教訓には納得するところが大きい。他人事では
ないのである。このように、予測不可能な状況であればあるほど、多様性
のある柔軟な種、体制の方が危機を乗り越え、生き残れる可能性が高いこ
とは、自然界の摂理と歴史が示しているとおりである。
 
 また、事前に準備していた避難計画やマニュアルに書かれていない予測
不可能な事態が起きた時こそ真価が問われることは、災害でもビジネスで
も同じである。
 
 我々の親の世代は戦争の空襲で家を焼かれたり、貨幣価値の変動により
貯金や愛国国債などが全て事実上紙くずになって、裸一貫からやり直さざ
るを得なかった人生を全社会的に経験しているが、現代の我々はこうした
大規模災害以外には社会的な被害体験はないから、打たれ弱くなっている
面は否定できない。
 
 いざというときには皆で助け合えば何とかなる、無理をしなくていいと
いう楽天的な希望がもてるような、そして被災者の不安や変化する要望に
柔軟に対応出来るボランテイア活動や援助になれば幸いである。

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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
  t-shigemura@himawarilaw.com 
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京都大学法学部・経済学部卒
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