『マイナンバー制度実施は監視社会への一里塚か、ビジネスチャンスか』 インスクエア ビジネスニュース Vol.877
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■━━━━━━━━━━━━━━━━━━[vol.877] 2015/09/29━━■
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01 ┃ 本日のコラム -『マイナンバー制度実施は監視社会への
┃ 一里塚か、ビジネスチャンスか』
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┃ / 重村達郎(弁護士)
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国民全員を12けたの番号で管理する「マイナンバー」の通知がこの10月
から始まり、来年1月から利用が開始され、自治体窓口で「個人番号カード」
を受け取れるようになります。
刑務所ではあるまいし、自分を番号で管理してくれと頼んだ覚えはないので
すが、勝手に国や地方自治体が持つ個人情報が番号で結びつくようになりま
す。
かつて国民総番号制の導入が、銀行や証券会社に仮名口座や他人名義株式
をたくさん持つ富裕層、及び彼らを有力な支持基盤とする政権与党内部から
の反対でつぶれたことがありましたが、隔世の感がありますね。
今でも、住民基本台帳制度の導入とセットの形で各人に基礎年金番号がつ
けられているのですが、子供や年金に加入していない人などは捕捉しきれて
いないところ、今度はお年寄りから赤ちゃんまで全部対象ですから大変です。
無論、医療・労働・年金保険制度や行政サービスの効率的運用というのは
建前で、本音は、国民が保有する資産、所得を一元的に捕捉し、税金を取り
っぱぐれないようにすることにあります。
10月から個人番号が書かれた通知カードが届き始めると、企業は従業員と
その扶養家族の番号を集める必要があります。役所に提出する給与の源泉徴
収票などに従業員と家族の番号を記載しなければならないからです。
すると、当然、個人情報の塊とも言うべき個人番号を適正に管理し、その
流出による不正利用を防ぐために、社内規定の整備・変更や従業員への研修、
個人情報保護にむけた安全管理対策などが必要になってきます。
当事務所では、給与、源泉徴収や雇用・労災保険料などの計算は一括して
会計事務所に依頼していますが、依頼先もきちんと管理してくれないと元も
子もありません。年金事務所でさえ膨大な個人情報の流出が報道されていま
す。
新聞や週刊誌などでは、副業がばれるとして夜の街が戦々恐々で、源泉徴
収をしない違法なクラブなどが増える可能性があるとか、消費税の10%へ
の値上げに伴い食料品等に対する軽減税率導入のかわりにマイナンバー利用
による申告で年4千円を還元するという突然の悪乗りに近い愚策に非難が集
中していますが、本質的な問題はむしろ監視社会への道を掃き清めることで
しょう。
ソ連崩壊前に東欧を旅行したときに、列車内で知り合ったポーランド人技
師に身分証を見せてもらい、しばらく文通をしたことがありましたが、突然、
開封されホッチキスでとめられたクリスマスカードが届いたことがありまし
た。
また、7,8年前、ウズベキスタンを半分観光で1週間程訪れた時には、滞在
中の宿泊先を全て書くように言われ、行動を逐一把握されかねない薄気味悪
さを感じました。
マイナンバー制度実施により、基礎年金番号から健康保険、運転免許証、
住民基本台帳番号、学校入学、貯金通帳、不動産登記、税務申告まで全て一
元的に管理されて、個人が丸裸にされるおそれは十分にあります。
いずれ、住民登録していないと就職することも家を借りることも困難にな
り、旅館やラブホテルを利用するのにもマイナンバーの記入を要求されたり
して、職業選択の自由や移動の自由まで実質的に制約されることになりかね
ません。
これはかの「平和安全法制」などよりも遙かに、戦時体制、監視国家につな
がる怖い話のように思います。
この制度導入にあたり、国会審議でどのような議論がなされたのかよく知
りませんし、実施の直前になってぶつぶつ言っても遅いのですが、制度対策
にかかる初期投資の市場規模が約1兆円にのぼるという試算もあるなかで、
マイナンバーの収集・管理を代行するサービスや関連端末機器の需要が見込
まれるIT企業、及びシュレッダー会社など付随した「特需」ビジネスの恩
恵にあずかれる一部の企業以外の個人にとっては、新たな負担と不安を増す
仕組みのように思います。
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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
t-shigemura@himawarilaw.com
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京都大学法学部・経済学部卒
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