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『マンション杭打ちデータ偽装問題をめぐって』 インスクエア ビジネスニュース Vol.905

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■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━[vol.905]2015/11/10━━■

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01 ┃本日のコラム -『マンション杭打ちデータ偽装問題をめぐって』
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  ┃ / 重村達郎(弁護士)
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 メルマガ編集委員藤田です。
 重村弁護士は、欠陥住宅問題について日弁連の幹事・委員として中心メンバ
ーとして関わってきています。
 以下、長年のトラブル専門家としてのコメントです。
 
 マンション杭打ちデータ偽装問題が広く報道されています。10年近く前の
建築士による構造計算偽装問題の時と同じように、とりわけマンション居住者、
またこれから購入を考えている人にとっては、不信感をもたらすものです。
 
 現在までの報道によれば、不正に関わったのは、杭打ちデータの作成・施工
業者である下請けの旭化成建材の2桁にわたる現場職員で、施工場所も全国に
わたっていますから、不届きな一建築士が起こした偶発的な問題ではなく、会
社の組織全体の問題であることは間違いありません。

 建築確認―検査体制も耐震偽装問題以降、一定規模以上の建物については構
造建築士によるダブルチェックになったとはいえ、制度そのものが性善説を前
提にしているので限界があります。もっと言えば、同体制はその程度のもので
しかないのです。実際、90%以上は安全性に問題はないはずですが。
 
 また、耐震偽装問題を含め、建築工事においては、指名停止処分なども恐れ
て、官庁工事についてはダブルスタンダードで、民間工事に比べ相対的にきち
んと施工している現場が多かったのですが、今回は、学校や公営住宅なども多
く、自治体の建築担当職員も比較的単純な偽装を見抜けなかったようです。
 
 ですから、建築確認の民間開放に偽装の主要な原因を求めたり、現建築確
認・検査体制の公的な強化で解決する類いの問題でないことも明らかです。問
題の根本に、現下における大規模マンションの供給構造の問題があるからです。
 
 現在、マンションは、できる前からチラシ広告・パンフレットと立派なモデ
ルルームだけを見て、先に申し込みをしてもらい、一定の購入客のめどがたっ
てから、莫大な土地代と建設費の融資にかかる金利を少しでも安くするために、
短い工期とぎりぎりに抑えた工事費で施工することが常態化しています。
 
 そして、杭打ちにかかるデータも安全率を3倍ほどは見ているので、その一
部が強固な地盤に届いていないことが現場で判明したとしても、建物全体の安
全性には影響しないだろうという安易な見込みのもとに、時間と費用のかかる
杭打ちのやり直しや補強などしないまま工事が進行していくのが普通です。
 
 ですから、今回の横浜のように、丘陵地が多く、強固な地盤までの深さも大
きく起伏のあるところでなければ、被害が顕在化せず、何事もなかったかのよ
うに過ぎていたかもしれません。
 
 一方、当該マンションを販売した三井不動産は、言質をとられないために、
住民説明会では明確な補償金額を示さず、逆にマンション全体の建て替えを提
案して誠意を示そうとしたとも伝えられています。
 
 こうなると、建物区分所有法で必要とされる建替えに必要な4/5の賛成が
とれないことを見越した高等戦術とも言うべく、マンション住民にとっては踏
んだり蹴ったりの状況です。
 
 でも、実は、一見上質なマンションも、上記のような歪んだ供給構造と、法
律上も住民意思の合意形成が困難な上に建てられているモノであり、利便性と
ステイタス重視で購入する人は、そのようなリスクもあることを覚悟の上で購
入すべき「潜在的な欠陥商品」ともいうべきものかもしれません。
 
 ですから、一番現実的かつ効果的な対策は、誤解を恐れずに言えば、データ
を偽装した会社には、まずは官庁工事の1年間指名停止、当該事業所には3ヶ
月の営業停止くらいの厳しい処分を科し、急ごしらえのデータ偽装が営業的に
全く割に合わないことを示すことが必要です。偽装に社会的責任ありです。
 
 その上で、本来の建築主であるべき住民が、青田刈りで購入するのではなく、
自分たちが建築士と協働で主体的に住宅を造り、購入する仕組みにしていかな
いと、カネと工期の縛りがある限り、いくら規制を強化したところで、いつま
でもモグラたたきのような状態が続くように思われます。根は深いです。

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▼プロフィール:
・氏名:重村達郎(しげむらたつろう)
・ひまわり総合法律事務所 弁護士(大阪弁護士会)
  t-shigemura@himawarilaw.com 
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京都大学法学部・経済学部卒
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